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年収400万円夫婦の老後資金はいくら必要?公的年金と自己資金のリアル計算

老後の生活は、「年金だけで生活する最低限の老後」と、「趣味や旅行を楽しむゆとりある老後」の二つに大きく分かれます。

年収400万円夫婦の公的年金のリアルな手取り額は月額22万円〜24万円と試算されます。これは、最低限の生活費とほぼ同額なんです。

しかし、ゆとりある老後(月額35万円)を実現するには、毎月約12万円の収入不足が発生します。この月12万円を25年間補うために、自己資金として約4,100万円が必要になるという現実から目を背けてはいけません。

この記事では、この4,100万円という目標額を、iDeCo(イデコ)やNISA(ニーサ)などの税制優遇制度をフル活用して、どのように達成していくかを、具体的なシミュレーションとともに徹底解説しますね。


目次

1. 公的年金受給額のリアルな試算

夫(年収400万円)が65歳から受け取る厚生年金の目安

老後資金の計画を立てる上で、まず把握すべきは公的年金の受給額です。特に年収400万円で40年間会社員として厚生年金に加入した夫の場合を試算してみましょう。

年収400万円を月額に換算すると約33.3万円ですが、年金の計算には平均標準報酬額(ざっくり言うと現役時代の平均月給)が用いられます。

この条件で試算すると、夫一人が65歳から受け取る年金の目安は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて月額14万円〜16万円程度になることが見込まれます。

この14万円〜16万円という数字が、年収400万円の夫が確保できる老後の収入のベースとなります。

妻(専業主婦・パート)の国民年金と加給年金の活用

夫婦の公的年金受給額を計算する際、妻の年金と加給年金の存在は非常に重要です。

  • 妻(専業主婦の場合): 夫が会社員の場合、妻は国民年金の第3号被保険者となり、保険料の負担なく国民年金に加入できます。40年間満額納付と仮定すると、月額約6.8万円の老齢基礎年金が受給できる見込みです。
  • 加給年金: 夫が65歳になった時点で妻が65歳未満の場合、夫の厚生年金に年間約39万円(月額約3.3万円)が加算される制度です。これは妻が65歳になり自身の年金を受給開始するまで支給される家族手当のようなもので、老後生活の初期の家計を大きく支える重要な収入源となります。

この妻の国民年金と加給年金を正確に把握することが、夫婦の年金総額をリアルに計算する上で欠かせません。

夫婦の公的年金を合算した月額と年間の総支給額

前述の試算に基づき、夫婦の公的年金を合算した総支給額を計算することで、老後の収入の全体像が見えてきます。

項目妻が65歳未満のとき妻が65歳以降のとき
夫の年金(目安)月額15万円月額15万円
妻の国民年金(満額)月額6.8万円月額6.8万円
加給年金月額3.3万円0円
夫婦合計(月額)月額25.1万円月額21.8万円
夫婦合計(年間)約301万円約262万円

この月額25.1万円という数字が、年収400万円夫婦の老後のベースとなる収入です。加給年金がなくなる65歳からの収入の段差を明確に理解し、計画を立てることが重要だと感じます。

年金からの税金・社会保険料を引いたリアルな手取り額

公的年金はすべてが手取りになるわけではなく、現役時代と同様に、年金からも税金(所得税、住民税)や社会保険料(国民健康保険料、介護保険料)が差し引かれます。

この手取り額を正確に把握することが、老後資金の不足額をリアルに計算する上で最も重要です。年金収入が年間300万円程度の場合、控除などを考慮しても、年間で約20万円〜40万円程度が税金や保険料として引かれる可能性があります。

夫婦合計の年金総支給額(年間約301万円)に対するリアルな手取り額の目安は、月額約22万円〜24万円です。

年金額=使えるお金ではないという現実を認識し、この手取り額を基準に老後の生活費をシミュレーションする必要があります。


2. 老後生活費と必要総額の計算

総務省データに基づくゆとりある老後と最低限の老後の費用

年収400万円夫婦が、老後生活でどれくらいの支出が必要かを、総務省や生命保険文化センターのデータに基づいて設定します。

  • 最低限の老後生活費: 夫婦二人で月額22万円〜24万円程度(住居費を除く)。これは、食費や光熱費などの基礎的な生活を送るための金額です。
  • ゆとりある老後生活費: 月額35万円程度。最低限の生活費に加え、旅行、趣味、孫への小遣いといったゆとりのための費用(月額約11万円〜13万円)を加算した金額です。

年収400万円夫婦の場合、公的年金の手取り額(月額22万円〜24万円)が、最低限の老後生活費とほぼ同額になることが見込まれます。つまり、ゆとりある老後を送るためには、自己資金による収入の底上げが必須となることが分かります。

住宅ローンの有無や車の維持費が生活費に与える影響

老後の生活費を決定づける最大の変動要因は、住宅ローンの有無車の維持費です。

  • 住宅ローンの有無: 65歳までにローンが完済できていれば、月々の住居費は固定資産税や修繕積立金のみに抑えられます。もしローンが残っている場合、老後の収入(年金)から毎月数万円〜十数万円が引かれることになり、老後資金の不足額が劇的に増加します。
  • 車の維持費: 特に地方在住の場合、車の維持費(ガソリン代、車検代、保険料)は年間で50万円〜100万円に達することがあります。老後も車を保有する必要があるかどうかは、月々の生活費の設定に大きな影響を与えます。

これらの固定費を老後までにどこまで圧縮できるかが、老後資金の必要総額を決定づける重要な戦略となります。

ゆとりある老後を送るために毎月不足する金額はいくら?

ゆとりある老後(月額35万円)を送るために、毎月不足する金額を計算してみましょう。

項目金額(月額)
ゆとりある老後生活費35万円
夫婦の年金手取り額(目安)23万円
毎月の不足額12万円

この月額12万円の不足額こそが、ゆとりある老後を送るために年収400万円夫婦が自己資金で準備すべきリアルな数字です。この数字は、旅行や趣味といった老後の夢を諦めないための具体的な積立目標となります。

90歳までのゆとりある老後で準備すべき自己資金総額

老後資金の必要総額を計算する際には、老後の期間を設定することが重要です。ここでは、夫と妻のどちらかが90歳まで生きることを前提とし、老後期間を**25年間(65歳〜90歳)**と設定します。

ゆとりある老後を送るための毎月の不足額12万円に基づき、総不足額を計算します。

$$\text{月々の不足額} \times 12 \text{ヶ月} \times 25 \text{年間} = \text{自己資金総額}$$

$$12 \text{万円} \times 12 \text{ヶ月} \times 25 \text{年間} = 3,600 \text{万円}$$

つまり、ゆとりある老後を送るために、自己資金として約3,600万円を準備する必要があります。これはインフレや運用益を考慮しない単純計算ですが、この3,600万円という数字が、年収400万円夫婦が目指すべき老後資金のリアルな目標額となります。

医療費や介護費用などの臨時出費に備えるための予備資金

上記で算出した3,600万円は、あくまでゆとりのある毎月の生活費を補うための金額であり、突発的な大きな出費には対応できません。老後資金の計画において、医療費や介護費用といった臨時出費に備えるための予備資金を別途確保することが必須です。

一般的に、夫婦二人の老後の医療費・介護費用として、総額で500万円〜1,000万円程度の準備が推奨されます。

予備資金の目安: 最低500万円

したがって、年収400万円夫婦がゆとりある老後を送り、万が一の事態に備えるための真の目標額は、毎月の不足額(3,600万円)に予備資金(500万円)を合算した約4,100万円となります。この4,100万円を目標に、iDeCoやNISAなどの資産運用戦略を立てる必要があります。


3. 不足額を埋めるための戦略

年金繰り下げ受給の増額率と損益分岐点シミュレーション

老後資金の不足額を減らすための強力な手段の一つが、年金繰り下げ受給です。これは、65歳からの受給開始を遅らせることで、年金受給額を増やす制度です。

  • 増額率: 1ヶ月遅らせるごとに0.7%増額され、最大75歳まで繰り下げることで、年金受給額を最大**84%**増額できます。
  • 損益分岐点: 繰り下げた分の年金受給額の累計額が、65歳から受給した場合の累計額を上回る年齢です。一般的に、繰り下げ開始から10年〜12年程度で元が取れるとされています。

例えば、夫婦合計の年金が月額20万円の場合、70歳まで繰り下げると月額約28.4万円になり、毎月の不足額を大幅に減らせます。この戦略は、健康で長生きできる自信がある場合に、非常に有効な不足額圧縮戦略となります。

退職金を運用に回すか、生活費に充てるかの判断基準

年収400万円夫婦の場合、退職金も老後資金を補填する重要な資金源となります。この退職金を運用に回すか、それとも生活費の不足に充てるかの判断基準は、老後資金の不足額によって異なります。

  • 不足額が大きい場合(目標額4,100万円に届かない): 退職金はiDeCoやNISAの運用資金として充当し、資産寿命を延ばすことを優先します。
  • 不足額が小さい場合(目標額に近づいている): 退職金を安全性の高い定期預金などで確保し、臨時出費用の予備資金として活用します。そして、生活費は年金と運用益で賄うことを目指します。

退職金は、老後資金の最後の大きな備えとなります。


4,100万円達成への道!年収400万円夫婦のためのiDeCo・NISA最強活用術


節税効果を最大化するiDeCoの活用

iDeCoの節税効果と年収400万円での最大拠出額

iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)は、年収400万円のご夫婦にとって老後資金準備の最重要ツールだと私は考えます。

最大のメリットは、掛金全額が所得控除の対象となり、現役時代の税金を軽減できる節税効果です。

年収400万円の夫(会社員)が企業年金がない場合、毎月の最大拠出額は23,000円(年間27.6万円)です。この金額を拠出した場合、所得税と住民税を合わせて年間数万円〜数十万円の節税効果が期待できます。

この節税で浮いたお金を、そのまま教育資金やNISA(ニーサ)に回すことで、老後資金と他の目標を効率的に両立させることができます。現役時代のキャッシュフローを改善しながら老後資金を準備できるのが、iDeCoの最大の魅力ですね。

教育資金と老後資金の両立を果たすための積立設計

年収400万円のご夫婦の多くは、老後資金と教育資金という二つの目標を同時に抱えています。この両立を果たすための積立設計には、資金の性格を考慮した戦略が必要です。

  • 老後資金(長期): iDeCo(節税メリット)とつみたてNISA(非課税メリット)を活用し、リスクを取った運用で増やすことを重視します。
  • 教育資金(中期): 使う時期が明確なため、iDeCoは使わず、つみたてNISAで低リスクな商品を選び、元本割れを避けることを重視します。

iDeCoを老後資金専用とし、NISAを両方の資金の柔軟な橋渡しとして活用することで、税制優遇を最大限に享受しつつ、資金の目的を明確に分けることができます。


資産を増やすための運用とシミュレーション

月々3万円の積立が20年後にいくらになるかのリアルシミュレーション

老後資金の準備で、つみたてNISAを月々3万円で積立した場合、20年後にいくらになるかをシミュレーションすることは、目標額達成の現実性を把握する上で非常に重要です。

積立元本は、3万円 $\times$ 12ヶ月 $\times$ 20年で、720万円です。

ここで年率3%(低リスク運用)と年率5%(中リスク運用)で運用できた場合を比較してみましょう。

  • 年率3%の場合: 20年後の総資産額は約983万円
  • 年率5%の場合: 20年後の総資産額は約1,233万円

このシミュレーションから、月々3万円という現実的な積立額でも、複利効果によって20年後には1,000万円超の老後資金を築ける可能性があることが分かります。時間複利を味方につけることが、年収400万円夫婦の老後資金準備の鍵となります。

老後資金の運用で選ぶべき低コスト・全世界株の選び方

老後資金の積立投資において、私が最も推奨するのは、低コストの全世界株式インデックスファンドです。

  • 低コスト(信託報酬): 運用にかかるコスト(信託報酬)が0.2%以下など、極力低いファンドを選んでください。コストは長期運用で複利効果を阻害する最大の要因となるからです。
  • 全世界株(分散効果): 日本、先進国、新興国といった幅広い地域に分散投資することで、特定地域のリスクを回避できます。老後資金は長期運用が前提であり、世界の経済成長の恩恵を幅広く受けることが、最も安全かつ効率的です。

iDeCoやNISAでこの低コスト・全世界株を定額で積み立てるというシンプルな戦略こそが、年収400万円夫婦の老後資金を確実に増やす最適解となります。


年代別で実行すべき積立戦略

30代:時間を味方につける積立のスタートダッシュ戦略

30代は、老後資金準備において時間という最も強力な武器を持つ時期です。この時期の積立のスタートダッシュが、将来の目標達成の難易度を大きく左右します。

30代が取るべきアクションプランは以下の通りです。

  • iDeCoとNISAの同時スタート: 少額でも良いので、iDeCo(税制優遇)とつみたてNISA(非課税優遇)を可能な限り早く開始し、複利効果を最大限に享受します。
  • リスクを許容した運用: 大学進学までの期間も長いため、株式比率を高めた商品を選び、高いリターンを目指すことも検討できます。
  • 目標額の逆算: 4,100万円という最終目標から、毎月いくら積み立てる必要があるかを逆算し、積立額を決定してください。

早く始めること、そしてリスクを取って増やすことが、30代の老後資金戦略の核となります。

40代・50代:資産の棚卸しと積立額の増額戦略

40代・50代は、老後まで残された時間が短くなるため、時間ではなく資金の力で不足額を補う戦略に移行します。

  • 資産の棚卸しと現状把握: ねんきん定期便で将来の年金受給額を再確認し、現在の貯蓄・運用状況と最終目標4,100万円を比較し、リアルな不足額を把握します。
  • 積立額の増額: 教育費のピークを過ぎた時期を見計らい、月々の積立額を最大限に増額しましょう。月々1万円の増額でも、10年で120万円以上の大きな違いとなります。
  • 運用リスクの低減: 50代後半になったら、運用資産を徐々に安全資産(債券など)に移行し、老後資金の元本割れリスクを最小限に抑える出口戦略を開始します。

この時期は守りに入りつつ、可能な限り積立額を増やすという両輪の戦略が重要となります。


よくある質問(Q&A)

質問 (Q)回答 (A)
Q1. iDeCoとNISA、年収400万円夫婦が優先すべきはどちらですか?最優先すべきはiDeCo(イデコ)です。iDeCoは掛金全額が所得控除となり、現役時代の税金が軽減されるため、節税効果が非常に大きいからです。年収400万円の場合、この節税メリットは年間数万円となり、この浮いたお金をNISAに回すことで効率が最大化します。ただし、60歳まで引き出せない制約があるため、緊急性のない老後資金専用と割り切り、NISAは教育資金などとの兼ね合いで柔軟に利用しましょう。
Q2. 夫が年収400万円で、妻が年収100万円のパートの場合、妻もiDeCoに加入すべきですか?妻もiDeCoに加入すべきだと考えます。パート年収100万円の場合でも、掛金全額が所得控除となり、住民税の軽減につながります。妻のiDeCoの最大拠出額は月額23,000円(企業年金がない場合)であり、夫婦それぞれでiDeCoを活用することで、世帯全体の節税効果を最大限に高められます。ただし、妻のパート収入が扶養の範囲内で、所得税がかからない場合は、節税メリットが薄くなるため、NISAを優先する選択肢も考えられます。
Q3. 年金繰り下げ受給は得ですか?何歳まで繰り下げるのが最適ですか?健康で長生きできる自信があるなら、得になる可能性が非常に高いです。年金を70歳まで繰り下げると、生涯にわたって受給額が42%増額されます。損益分岐点(65歳から受給する累計額を超える時点)は75歳〜77歳程度となることが多いです。平均寿命を考慮すると、70歳まで繰り下げるのが最適解の一つと言えます。ただし、70歳までの生活費を自己資金で賄う必要があるため、老後資金の総額が十分に確保できていることが前提です。

まとめ

年収400万円夫婦の老後資金計画で、まず知るべきは公的年金の手取り額です。夫(年収400万円)と妻(専業主婦)の場合、夫婦合計の年金手取り額は月額約22万円〜24万円と試算され、これは最低限の老後生活費とほぼ同額です。

しかし、ゆとりある老後(月額35万円)を送るためには、毎月約12万円の不足が発生します。この不足額を25年間(65歳〜90歳)補うために、自己資金として約3,600万円、そして医療・介護の予備資金(最低500万円)を合わせた約4,100万円が、年収400万円夫婦が目指すべきリアルな貯蓄目標となります。

iDeCoとNISAをフル活用し、この目標達成に向けて今日からスタートしましょう。

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