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つみたてNISAの満期(20年後)をどうする?FPが教える最適な取り崩し方

「20年後、つみたてNISAの非課税期間が終わったら、この資産はどうなるの?」「せっかく増えた利益に税金がかかってしまうの?」—長期的な資産形成に取り組むあなたにとって、**満期(出口戦略)**は最も気になるテーマですよね。

2024年に新NISAが始まりましたが、旧つみたてNISAの資産は自動ロールオーバーされないため、満期後の行動を間違えると、思わぬ課税リスクや資産枯渇のリスクを負うことになります。

私はFPとして、非課税期間終了後の資産がどうなるかという制度の仕組みから、新NISAを活用した再投資戦略、そして資産寿命を延ばすための最適な取り崩し方までを徹底解説します。この記事を読めば、20年後の不安を解消し、あなたが築き上げた大切な資産を、賢く、無駄なく、そして長く活用するための明確なロードマップが手に入るでしょう。


目次

つみたてNISAの非課税期間「20年後」に起こること

非課税期間終了後の「自動ロールオーバー」は存在しない

つみたてNISAの最大のメリットは、最長20年間にわたって利益が非課税になる点ですが、この非課税期間は自動延長されるものではありません。ロールオーバー(非課税期間の延長)という制度は、つみたてNISAには設けられていません。

したがって、20年間の非課税期間が終了すると、その資産は自動的に課税口座(特定口座または一般口座)へ移管されます。例えば、2023年に投資した分は2042年末で終了します。この「20年後の満期」を把握し、事前に売却か、課税口座で運用継続か、あるいは新NISAの枠で再投資するかという、明確な判断を下す準備が必要です。旧つみたてNISAの資産は、新NISAの非課税投資枠へ自動的に移管されないと認識しておくことが、計画の第一歩となります。

課税口座(特定口座または一般口座)への移管の仕組み

非課税期間20年が終了し、投資信託が課税口座へ移される際、最も重要となるのが取得価格(簿価)のルールです。

課税口座に移管された資産の簿価は、非課税期間が終了した日(満期日)の時価に「みなし」て設定されます。例えば、元本100万円で満期時の時価が150万円だった場合、課税口座での簿価は150万円になります。この150万円が、その後の売却時に利益が出たかの判断基準となります。非課税期間中に得た50万円の利益は永遠に非課税です。しかし、移管後に時価が150万円から160万円に上昇して売却した場合、課税対象となるのは10万円(160万円から150万円を引いた金額)です。移管後の運用益には、約20%の税金がかかります。


旧つみたてNISA終了後の資産を「どうする」か?3つの選択肢

選択肢1:すぐに全額売却し、利益を確定させる

満期時に含み益(利益)が出ている場合、その資産をすぐに全額売却することは、最もシンプルで確実な出口戦略です。20年間で得た運用益は全額非課税のまま手元に確定します。

この選択肢のメリットは、その後の相場変動リスクから完全に解放されるため、「確実性」を重視する場合に最適です。特に、満期後5年以内に子どもの大学入学金など、確実に資金を使う予定がある場合や、マーケットが過熱気味で高値圏にあると判断される場合には、迷わず売却し、非課税の恩恵を最大限に享受することが賢明です。必要な資金を市場の変動にさらすリスクを避けるため、安全性の高い預金などに移し替えることが、私の基本的なアドバイスとなります。

選択肢2:課税口座で非課税期間終了後も運用を継続する

非課税期間終了後もすぐに売却せず、自動的に移管された課税口座(特定口座または一般口座)で運用を続けることも可能です。

最大のメリットは、売却や再投資の手間がなく、そのまま複利効果を生かして運用を継続できる点にあります。資金を使う予定がまだ先で、将来的な成長を期待できる場合は、効率的な選択肢となります。しかし、デメリットとしては、移管後の運用益に約20%の税金がかかることです。また、満期時の時価が簿価となるため、移管後に価格が下落し、簿価を下回って売却した場合の損失は損益通算や繰越控除の対象にならないという、NISA特有の税制上の制約を受けます。課税を理解した上での長期的な覚悟が必要となります。

選択肢3:新NISAの成長投資枠・つみたて投資枠へ移管する

旧つみたてNISAの資産を、非課税のまま新NISAの非課税枠に移し替えたいと考える場合は、「一度旧NISA口座内で全額を売却し、その現金で改めて新NISAの枠内で商品を購入する」という「再投資」の手順を踏む必要があります。旧つみたてNISAの資産は、新NISAの非課税投資枠へそのままの形で自動的に移管(ロールオーバー)することはできません

この再投資戦略は、旧NISAの非課税メリットを最大限に享受しつつ、新NISAの「非課税期間が無期限」という最大のメリットを活かすための、最も強力な出口戦略となります。具体的には、満期が近づいた旧NISA資産を売却し、その売却代金と元本を合わせた金額を、新NISAの枠(つみたて投資枠または成長投資枠)を使って再度投資します。これにより、資産の非課税運用を実質的に継続することができ、長期的な複利効果を最大限に生かしながら、将来的な取り崩し時の課税リスクを排除できます。


2024年以降の「新NISA」活用で出口戦略を最適化する

新NISAの非課税枠へ移管する際の注意点とメリット

旧NISAの資産を新NISAに再投資する際、最も注意すべきは「売却と買い付けのタイミング」です。売却から買い付けまでに時間差が生じると、その間に相場が上昇した場合、非課税枠の購入価格が高くなってしまうという機会損失が発生します。

そのため、売却の指示と同時に、新NISAでの買い付け予約を行うなど、時間差を最小限に抑えることが理想的です。また、新NISAの非課税期間は無期限となり、生涯を通じて1,800万円という非課税投資枠が与えられます。旧NISA資産を新NISAへ再投資することで、この無期限の非課税枠を早期に活用し、老後資金のような長期運用を目的とした資産を、「いつ取り崩しても非課税」という究極の優位性を持たせることができます。この戦略は、将来の出口戦略を圧倒的に有利にする最重要戦略だと私は考えています。

新NISAで「取り崩し専用口座」を作るという発想

新NISAに再投資した後の、具体的な「取り崩し方」として有効なのが、新NISA口座を「年金代わりの取り崩し専用口座」として位置づけることです。

多くの証券会社では、投資信託を毎月自動で一定額売却し、指定の銀行口座に入金するサービスを提供しています。この「自動売却サービス」を新NISA口座内で実行すれば、毎月決まった金額を生活費として受け取ることができ、取り崩しによって発生する利益が全額非課税となるため、老後の年金受取額を実質的に増やすのと同じ効果が得られます。課税口座で取り崩しを行うと利益部分に約20%の税金がかかりますが、新NISA口座内ならこの税金がゼロになります。この「取り崩し益も非課税」という点が、新NISAの最も強力なメリットの一つであり、旧つみたてNISAからの資産を新NISAへ再投資すべき最大の理由です。


FPが教える「最適な取り崩し方」の基本戦略

資産寿命を延ばす「定率取り崩し」 vs. 「定額取り崩し」

長期運用で築いた資産の「最適な取り崩し方」を考える上で、世界的に有名になったのが、資産の年間取り崩し率を4%以下に抑えれば、資産が30年間尽きることなく運用できる可能性が高いという4%ルールです。

具体的な方法として、「定額取り崩し」(毎月一定額)と「定率取り崩し」(資産残高に対して一定の割合)の2つの方法があります。定額取り崩しは生活費の計画が立てやすい反面、市場の暴落時にも取り崩し額が変わらないため、資産の回復力を奪うリスクがあります。一方、定率取り崩しは、市場が下落すると取り崩し額も減るため生活費の計画は立てにくいものの、市場回復期を逃さず、結果的に資産寿命を延ばす効果が高いとされています。特に、取り崩し開始直後に暴落が起こる「初期集中リスク」を回避する上で、定率取り崩しは非常に有効な戦略です。

暴落時にも売却を避ける「リスク許容度別」の取り崩し率

つみたてNISAで築いた資産を取り崩し始める際、最も避けるべきは「市場の暴落時に、生活費のために損切り(安値で売却)すること」です。

これを避けるためには、「取り崩し資産とは別に、数年分の生活費に相当する現金を確保しておく」という、リスク許容度に基づいた現金比率の仕組みを構築することが不可欠です。私の推奨する戦略としては、「3年~5年分の生活費」を現金(預貯金など)で確保し、その現金が尽きるまでは、NISA資産からの取り崩しを停止するか、最小限に留めるという方法です。この現金クッションの存在が、精神的な安心感にもつながり、投資判断を冷静に行うための土台となります。特に高額の支出を伴うライフイベントの直前は、必要な金額を売却して現金化し、市場変動リスクから切り離すことが原則です。


利益確定(売却)時の税金と確定申告の知識

課税口座移管後の「簿価」の決め方と税制上の注意点

つみたてNISAから課税口座へ移管された資産については、非課税期間が終了した日(満期日)の時価が、その後の税金計算の基準となる「みなし取得価格(簿価)」となります。

このルールがもたらす税制上の注意点は、もし満期時に**含み損(元本割れ)**が出ている状態であったとしても、みなし取得価格は満期時の時価(下落した価格)で設定されてしまう点です。この場合、その後相場が回復して元本まで値上がりし、売却したとしても、元本の回復分まで課税対象となってしまうというNISA制度の最大の「落とし穴」の一つです。含み損の額と資金の必要性を考慮し、「満期時に含み損が出ている場合は、すぐに売却するか、相場回復を待つか」という非常に難しい判断が迫られます。

売却益が出た場合の「税金(20.315%)」と確定申告の知識

課税口座へ移管した後、売却によって利益(みなし取得価格を超えた分)が出た場合、その利益に対しては20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)の税金が課税されます。

移管先が特定口座(源泉徴収あり)の場合、証券会社が売却の都度、自動的に税金を計算し、納税まで完了してくれるため、原則として確定申告は不要です。一方、移管先が一般口座であったり、特定口座(源泉徴収なし)を選択している場合は、投資家自身が確定申告を行う義務が生じます。また、課税口座に移管した後、その資産を売却して損失が出た場合、その損失は他の課税口座の利益と損益通算できる可能性があり、損失が残る場合は3年間の繰越控除も活用できる場合があります。税制の恩恵を最大限に受けるためにも、損失が出た場合は、確定申告によってこれらの制度を積極的に活用することが重要です。


まとめ

つみたてNISAの非課税期間20年が終了した後、その資産は自動的に課税口座へ移管されます。この時、「ロールオーバー」は存在しないため、投資家は売却か継続運用かという決断を迫られます。FPとして最も推奨する最適な出口戦略は、2024年に始まった「新NISA」の活用です。

つみたてNISA満期後の最適戦略

  1. 非課税確定と再投資: 満期が近づいたら、旧NISA口座内で資産を売却し、非課税の利益を確定させます。その売却代金を、**新NISAの非課税枠(生涯1,800万円)で再度買い付け直す「再投資」**を実行します。
  2. 非課税期間の無期限化: この再投資により、旧NISAで築いた資産の運用を、新NISAの「非課税期間無期限」の枠に移し替えることができ、将来の取り崩し益も非課税となるという最大のメリットを享受できます。

最適な取り崩し方

新NISAに再投資した後の取り崩しは、「資産寿命を延ばす」ことを最優先に考えます。

  • 定率取り崩し: 資産残高の4%程度の定率で取り崩す「定率取り崩し」を採用することで、市場の回復期に資産の消耗を抑え、枯渇リスクを大幅に下げることができます。
  • 現金クッションの確保: 暴落時にも売却を避けるため、3〜5年分の生活費を現金として確保し、市場が低迷している間はNISA資産からの取り崩しを停止する仕組みを作ることが不可欠です。

旧つみたてNISAの満期は、新NISAの無期限非課税枠を活用し、資産形成の最終段階である「取り崩し」を最適化するための絶好の機会です。満期時の簿価や税制の落とし穴を理解し、計画的に再投資を進めることが成功の鍵となります。

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